2030年の世界地図帳

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落合陽一の「2030年の世界地図帳」を読んだ。これから先、人間が地球で持続的に生き続けられるかをテーマに自論を展開している。

具体的にはSDGs、国連で採択された持続的可能な開発目標をどう達成するかだ。

SDGsは、貧困、飢餓、福祉、教育、平等、安全、経済成長、技術革新、環境、平和など、人間がこれから地球上で生存する際、向き合わなければならない17項目が目標として掲げられている。

国連加盟国の全会一致で可決した2030年までの目標だ。よく全会一致したなと思いきや、各国の最大公約数的な面は否めないらしい。なので大企業はこぞってSDGsの団体に加盟し、各分野に特化した活動することで企業イメージアップを謀っている。サラリーマンが東京五輪のバッチの横につけているあの円いバッチだ。

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SDGsは多岐に渡る、なのでこの本では、テクノロジー、貧困・格差、環境・資本主義、SDGs・ヨーロッパと4章に分けて述べられている。各章には対談も組まれており、池上彰氏との対談も興味深い。詳細は本書に譲るとして、なるほどと思った箇所がある、資本主義を一枚岩で考えるのではなく国ごとに特徴付けているところだ。そうすることで全体が俯瞰でき最後の提言が生きてくる。

資本主義は今や共産主義に勝利し我が世の春を謳歌する反面、様々な限界も指摘されている。そんな資本主義を国別に4つの形態に分類してる。

まず、①アメリカ。成功した企業家が新市場を求め限りなく拡大していく、一方で搾取と格差が問われる。日本はその傘の下で成長してきたわけだ。②次に中国。国家が管理する共産主義市場経済、神の見えざる手などお構いなし、最後は共産党が何とかする変形資本主義。③そしてヨーロッパ。資本主義の発祥の地、伝統と文化を強みにしたブランド戦略だ。日本のようにスクラップandビルド的消費であくせく経済を牽引するのではなく、古いものを大事にするリユース資本主義だ。④最後がインド、アフリカなどの開発途上国。これがまた面白い。大国は中国を除き、封建制君主制から民主主義を勝ち取り資本主義に移行した。そこで競争の原理が働き、獲得した利益を技術開発に再投資しさらに先端技術を突き詰める。しかしインドやアフリカは違う。途上国には民主主義、資本主義を経験する前から、つまりいきなり最新テクノロジーがやってくる。このテクノロジー、現地独特の環境と融合し商品開発される。例えばケニアのMペサという電子マネー、日本よりよっぽどキャッシュレス化が進んでいる。また、開発途上国では設備投資費用の関係で固定電話より携帯電話が普及する傾向が強い。なのでユーザーの間で限られた通信時間のやりとりが盛んに行われ通信時間を現金の代用品として使えようなった、こんなサービス先進国では考えられない。また、インドのタタの20万円の自動車など、日本では発想も及ばないものまで登場した。これらをリバースイノベーションという、現地のニーズから商品開発し破壊的なイノベーションを巻き起こすことだ。いずれにしても、面白い視点だ、流石だ。

ここで、著者は日本の立ち位置について歴史、伝統の観点からオチをつける。

アメリカの歴史はヨーロッパが出所だが独立し一通りゼロベースからのスタートだ、なので歴史は500年と浅い。中国は文化大革命で何千年と言う歴史を否定した、ここも歴史の断絶があり伝統が断ち切られている。そこにいくと先にも触れたがヨーロッパは伝統と文化の国の集まりだ。つまり伝統と熟練された技術に裏打ちされた高付加価値かつ持続可能な手法で資本主義を成り立たせている。

そこで日本はというとどうか、歴史、文化ではヨーロッパに引けを取らない伝統を持っている。だが、その長く培われてきた伝統、文化が安い価格競争に晒され、気がつくと文化、伝統すら無くしかけているのではないか。肝心なのは、米中の単純な性能のみで競う消費型の開発競争には組みせず、グローバルの基準から外れたヨーロッパのように日本というローカルを生かしたイノベーションこそ鍵になる。

そんなようなことが書いてある。なるほど、ごもっとも。日本の強みは日本にしかない。池上氏との対談でも言っているが、セミパブリックがポイントだ。プライベート、パブリックそのどちらでもない空間、例えば銭湯。周囲からの同調圧力が安全性、控えめ、思いやりにつながる。二項対立ではなく並列、相互監視的文化、日本独特だ、これが世界を変えるかも。これを今一度思い起こせばSDGsだって大丈夫だ。いい国に生まれた。

おしまい

2019.11.22

浦和