常識

三越前に用事があったので、所用を済ませ、神田神保町で古本を漁り、新刊を求めて行き慣れた新宿紀伊國屋に回った。オレにとって書店は心にエネルギーを充電してくれる場所だ。なので定期的に行かないとガス欠になる。

紀伊國屋を後にしたところで今度はスマホの充電が切れかかっていたのでコーヒーを飲みにドトールへ。スマホの充電ができる座席は限られている。幸い空いていたので充電しながら本を読んでいると殆どの席でパソコンしている。年齢層は学生かネットで仕事をしている30代ぐらいが多い。でもパソコンパチパチやりながら電話している奴がとても多い、うるさい。公衆の面前で電話するにしても席を外し、遠慮がちにするのが礼儀だと思っていた。それに架かってきたものではなく、こちらから架けている、平気の平左衛門。会社で仕事をしているが如くなんの躊躇いもない。遠慮もなにもあったものではない。ドトールではいいとされているのか。少なくともそう言う奴が増えることで最初は遠慮がちに、段々当たり前に、最後は常識に。誰も注意しないとドトールの非常識が日本の常識になっちゃうよ。

ドトールの後、現役時代によく通った思い出横丁の五十鈴という焼き鳥屋に行った、当然もつだ。懐かしい。ここ一年ほどご無沙汰。この店はオレが会社で落ち込んだ時に、他の客との会話や店主の一言でどれだけ救われたか、この店無くしてオレなしという思い入れのある店だ。先代の時から通っている。

いつものとば口に陣取って先ずはおしんこ、焼き鳥は勿論うまいがなんといってもぬか漬けと冬の白菜漬けだ。年末は白菜漬けをお土産で持してくれた。季節の漬物、キュウリ、カブ、ナス、ダイコン、極め付けの白菜。今の時期はキュウリとダイコン、ダイコンの白いとこ、つまり先の辛いところを頼む、やっぱり絶品だ。

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この店、大皿に串を見事に盛っていてカメラアングル最高、然もありなん、通りすがり観光客が写真を撮っていく。

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そこに強烈にストップがかかる。「ノウ、ピクチャー」といって手で遮ぎる。マスターは知っている、店の写真を撮ることは必然的に客も映り客が嫌がることを。そしてオレが現役時代にこの場所、この席で飲んでいた時、写真を撮ろうとした外人にオレが手で遮ってたことを。寛ぎながら飲んでいる先からパチパチ写真を撮られると段々ムカついてくる。以前はそんなことはなかった、インバウンドからだ。そんな気持ちをマスターは代弁してくれているのだろう。ここはお店の組合みたいなものがあり、そこでも問題視されていて規則を作ろうとしているらしい。勝手に人の写真を撮ることをなんとも思わない外人。そんな外人にマスターは毅然とした態度で接する。マスターが言うとごめんなさいと日本語で謝る金髪の女性もいる。外人もわからないわけではない。外人を日本に誘致している観光会社、日本でやってはいけないことはちゃんと言っておいて欲しいものだ。なるほどインバウンドは経済効果は抜群だ。でも誘致する観光会社は売るだけでなくそれなりの義務を認識してもらいたい。鉄道会社が安全を第一に考えているように、ツアー会社の責務は日本の常識だ。

帰りしな、ここはやっぱり落ち着くってマスターに言ってきた、嬉しそうだった。落ち着く場所、一に家、二に五十鈴、本当だぞ。

この店は使った串をお湯で煮て綺麗にし再利用している。手間はかかるが先代からのこだわりを守っている、立派だ。

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おしまい

2019.11.15

新宿、ションベン横丁