年頭にあたって(ハラリにハマった)

このお正月「21Lessons」という本を読んだ、ハマってしまった。著者はイスラエル人のハラリという人、ゲイであることをカミングアウトしている。本書にも出てくる。

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情報テクノロジー(IT)とバイオテクノロジーという双子の革命により人間の思考回路はアルゴリズムに支配される、そんな未来が実現する。時間がない、すぐに行動せよ、それにはまず自らがどう生きるかを今すぐに考えること。そのための21のヒントがここにある、ということを発信している本だ。

情報テクノロジーはAIが情報をどんどん取り込んで頭が良くなっていくこと、いわば機械的。一方、バイオテクノロジーは生化学的な脳の研究成果、脳の回路が徐々に解明され、人間の意識まで具現化されていく、いわば人間的。この二つを問題解決の手段であるアルゴリズムが合体させ人間の判断や感情まで先取りする。我々が大きな決断をしなければならない時、あるいは人生で何かに迷った時、アルゴリズムがこうすると最適だよ、と教えてくれる。そうすると自分で考えなくて済むのでとても楽チンだ。

つまりGAFAやBATHがスマホなんかで我々が無意識のうちに提供した個人データと脳の回路を再現したAIで最適な個人の行動様式を本人に先立って判断する、それに我々が従う。こんな社会がもうそこに迫っている。で、我々はどうする、そんな問いかけをしている。

この考え、既視感を感じる。サラリーマン時代、会社という船に揺られながら、人生の大半を生きてきた。船内では、昇進、昇給、異動、上司、部下、喜び、落込み、嫉み、怨み、表彰、懲戒、面従腹背、上意下達、下克上、そんなことが繰り広げられる、これはもうヤバイなんて思うこともある、なんのことはない、いつの間にやら慣れる。少なくとも船を降りるか降ろされるかしなければとりあえず何とか生活していける。運悪く沈没ってこともあるが、その時は船を乗り換えるか陸に上がるかすればいい。

そのかわり大きな代償がある。船に乗るということは、自分の意思を棚上げし、船長以下同じ方向を向いて荒波と戦わなければならない。そのため目標、戦略、判断、すべてを会社が決めてくれ、只々出世と給料のことを考えていればなんとかなる。つまり自分でこれからどうするかいちいち悩まなくても生きていける。順風満帆とはいかないまでも、嵐の時の宜候、取舵、面舵は会社が決めてくれるし、船のメンテだってチャントやってくれる、今のところ年金基金もある。通勤地獄と若干の息苦しさを我慢すれば極楽だ。

でも、そんな受動的な人生を35年以上もやると陸に上がった時にふらついて、どこに向かって歩いていけばいいか皆目見当がつかない。やりたい趣味はあったはずなのになんかが違う、落ち着かない。何故か、自分で自分のことが決められない自分になったから。右へ倣えの教育を経て、左右も上下も前後も会社の手のひらで懸命に働く。やっと解放され、さあ、能動的、率先的、自発的に、と言ったってそんなの無理だろう。

人間は向上心の塊だと思う。少しでも偉くなって少しでも多くのお金を稼ぎたい、家族のことだってあるし、プライドだってある。そのために日々勉強をし、体を鍛え、昨日よりも今日、今日よりも明日と努力する。でもそれは、船の上での話だ。本来人生というものは、船の上は手段で陸が目的のはず、何故か逆転していた。

慣れって本当に怖い。自分の立ち位置とこれからどこへ行こうとしているかを常に持っていないとダメだ。なのでその自分を持つこと、それがあるから陸で自分らしく生きていけるというもんだ。

これから時代、1万年人類が経験してきたことがたかだか300年で劇的に様変わりしてきた。更に進化のスピードは累乗的に速くなる。そんなのついていけっこない。人間が作った社会なのにその社会から人間が置いてきぼりをくう、えらいこっちゃ。人間は自分と外界と二つの世界で考えがちだが、第三の界がある、社会だ。本書の著者ハラリの前作「ホモ・デウス」に書いてあった。国、近隣住民、法律、税金、道徳、AI、みんなそうだ。その社会が歴史を作りその歴史から我々は学んできた。でも今、その社会に飲み込まれそうになっている。

これからは、船長がAIだったり、船自体が無くなったりする時代だ。個人ではどうしていいかわからない、その時AIが魔の手を差しのべてくる。

それに立ち向かうために、少なくとも21のレッスンで見識を広げ、心の胆識を感じておきたい。その過程が人生の道標でもいいのでは。

デジタルネイチャーの落合陽一も言っている「人生一生社会科見学」。

因みに21のヒントは、テクノロジー(幻滅、雇用、自由、平等)、政治(コミュニティ、文明、ナショナリズム、宗教、移民)、絶望と希望(テロ、戦争、謙虚さ、神、世俗主義)、真実(無知、正義、ポスト・トゥルース、SF)、レジデンス(教育、意味、瞑想)の5つに分けられている。

1年かけて深掘りできればいい。年末の成果は21について自分の意見を明確に持つこと、これができていればアルゴリズムに少しは戦えるかも。陸に上がった時に、考える葦が風に揺らめくススキにならないように。上がった後でも決して遅くない、大丈夫だ。いつの時代も日は登る。この写真は沈んでるところだけど。

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以上のことは人間である以上永遠に変わらない、と思ってること自体、変化についていけてない。

今年の目標、21レッスン、ラジオ体操第一毎日、1日1万歩毎日、本50冊読破、ブログ70回UP、株で少し頂く。楽しみだ。

今年も飲むぞ、呑むぞ、のむぞー!

おしまい

2020.1.22

大宮、アカマル屋