藤さん

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部屋の整理をしていたら懐かしいパンフが出てきた。30年前、来日したローリングストーンズのコンサートに行った時のもの、あまりに懐かしいので徒然に思いを馳せてしまった。

当時はまだ独身、思い返してもトピックス的な出来事が多く、勇気を出してもとてもとても全ては語れない。そんな非サラリーマン的生活にいつも一緒だった連れがいる。会社で知り合った悪友というか一応先輩だが年下、何となく馬があった藤さんだ。なのでお誘いを断ったことはないし、率先して飲んで飲んで飲みまくった。ロック好きの藤さんに誘われていったのが冒頭のストーンズのコンサートだ。

当時は、会社に行くのか飲みに行くのか勤労者にあるまじき社員だったと思う。仕事はやる時はやったが遊ぶ時も遊んだので会社から見ると後者がまさったためか同期の後塵を拝していた。そんなの一晩寝ればすっかり忘れて元気一杯、午前中二日酔い、午後から徐々に復活、夕方見事に復活、そんな毎日、振り返ると結構楽しかった。

中でも忘れられないのが1985年開催のつくば万博だ。会社が安アパートの一室を借りて3名から4名ぐらいをひとグループにして1週間交代で勤務させていた。その同じグループに藤さんとオレも参加させられ軟禁状態、そんな状況下でもヤッパリ酒好きの藤さんとオレは他の奴が寝静まった後も二人して遅くまで安アパート飲みだ。今はメジャーになっている韓国の酒で眞露という焼酎があるが当時は出始めの頃でアパート近くの自動販売機でボトルを売っていた、便利でとても安かったのでそればかり飲んで話し込んだものだ。

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拘束時間が長かったので残業代が半端ない、毎月ボーナスだ。この辺は親会社が社会的責任を重んじる会社だったため子会社もブラックではなかったので時間が金に変わっていった。それで車を買ったやつもいるが、我々は一週間我慢し解放されるとその反動でセッセと消費型。でも、いくら金がもらえても、同じメンバーで一週間毎、半年間缶詰にされると色々鬱憤が溜まってくる、仲間割れもシバシバ、そんな我々を上手く発散させてくれたのが藤さんだ。その一つが仕事帰りに必ず寄ったところがある。万博会場に大型ビジョンが設置されていて、6時だったか毎日同じ時間に上映されるものがあった。それをメンバー全員でポカリスエット片手に見入る、10分程度だったがこれが何とも言えず毎回感動しメンバーの一体感を醸し出す。藤さん、メンバーの中でリーダー的役割をしっかり果たしている、いい加減だけど人の心を掴むとてもステキな奴だ。

それからこんな話もある。本社からお偉いさんが陣中見舞いに来た、高校時代によくいじめられた士舘出身、その上司も酒好きであれ出せ、これ出せ、と喧しい。程々酔ったなと思った頃、「腹減ったなんか無いか」なんていいだすから、カップヌードルならありますとしおらしく答えた。ここで大人気なくいたずら心が顔をだす、お偉いさんがトイレに行った隙にそそくさと風呂に直行、あとは想像にお任せする。お偉いさん、黙々と食す。懐かしい。

そんな藤さん、数年後に会社を辞め病気で早世しちゃった。最後の別れの時の安らかな顔は一生忘れない。

大型ビジョンで見てたのは、「we are the world」これを聞けば藤さんがそこにいるようだ。

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2019.8.2

新宿