ポピュリズムとシステム1

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スッキリした。ある国の大統領が就任して以来気になっていたポピュリズム。世界的に言葉が一人歩きしている感があるがこの本のおかげで理解できた。薬師院仁志という社会学者が著した「ポピュリズム」だ、新潮新書から出ている。民主主義を基本におき各国のポピュリズム政党やポピュリストを挙げその共通点からポピュリズムの定義化を試みている。民主主義の入門書といてもいい。忘れないためにいくつかのポイントを覚書しておきたい。

ポピュリズムの意味は様々だ。人民主義、大衆煽動主義、民衆主義。でも、何とか主義で理解しょうとするととてもややっこしい。ポピュリズムポピュリズムとして定義付けした方がしっくりくる。

ポピュリズムは選挙に当選することを自己目的化した一つの手法に過ぎない。時の政権から一票を勝ち取るために民衆の置かれた不満や不安を煽り、時にはデマを流し煽動する。そこに右や左、リベラルやソシアルはない。著者は言う「民衆の脳みそに働きかけるのではなく心情に働きかける。人々に不満を焚きつけると同時に自らを何か大きな構想を抱く改革者だと印象づける。他者を否定することによってしか自分を肯定することができない」。

キモは間接民主主義だ。我々人民は選挙で議員を選び政治を委ねる。なので議員は選ばれるに足る人格、知識、教養を持っていなければならない(本書は「エリート」と呼ぶ)。選挙でエリートを選ぶ側にも一定のそれは要求される。でも、人民は皆そうとは限らない。そこに間接民主主義の落とし穴がありポピュリストのつけ込む隙がうまれる。一部の大衆はポピュリストの発したエリートに対する一言、例えば「減税」に反応する。さらに著者は言う「利益誘導で減税といった政策を選挙に利用する政治姿勢である。民意を代弁する態度ではなく、民意を作り上げる行為だ。民意に沿うことで支持を伸ばすのではなく、宣伝や演出によって世論を都合よく操作し、民意の方を自分たちの主張に一致させるのである」。

いずれにしても、これから世の中を渡っていく上でポピュリズムの理解は必須だ。何処そこの大統領の一言でこれだけ世界経済が翻弄され株価が面白いように波打つ。市場主体であるはずがいつの間にやらデマゴーグ主体、そんなことも気づかず株価の増減に一喜一憂する。今日明日のルーチンも大事だけど、それがのっかっている社会というお椀はもっと大切だ。気がつかないうちに流される、どんぶらこ、どんぶらこ、と。

このポピュリズム、洗脳されやすいタイプがいる、システム1の人だ。以前のブログでも書いたが、人の思考、認知の仕方には二通りある。システム1は物事を即断的、直感的に判断しその根拠であるエビデンスの質にとらわれない、システム2は一度自分に立ち返りあらゆる観点から冷静に判断しようとする。そうハリネズミとキツネだ(ブログ「トンボのような大きな目のキツネ」)。いずれにしても、政治家やマスコミの主張は冷静に聞くことが重要だ、システム2の目で一票を。

おしまい

2018.8.16
初盆の儀式がやっと終わって
岡山